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番外編 橘さんの結婚
「祝い酒や」
度会さんが一声掛けると、若い衆の皆さんが一升瓶の酒を盃に注いで回り、あっというまに酒盛りがはじまってしまった。
「未知も遠慮せずほら呑め」
古参の幹部さんに盃を渡され、断るまもなくお酒をなみなみと注がれてしまった。
「佐瀬さん、すみません。妻は今妊娠中でして……気持ちだけありがたく受け取っておきます」
「それなら遥琉、お前が代わりに呑め」
「いえ、その・・・」
【佐瀬さん、実は彼・・・】盃を持ったまま、正直に言うべきか思案に暮れていると、
「遥琉は未知や子供たちのため、酒も煙草も断ったんだ。優璃も同じだ。代わりに俺が呑む。未知、それを寄越せ」
言われるまま柚原さんに渡すと、それを一気に呑み干した。
「柚原おめでとう」パチパチと拍手をしながら千里さんと心さんが姿を現した。
「千里、普通そこはお兄ちゃんおめでとうじゃないのか?」
「恋のこの字も知らないお兄ちゃんを応援しても面白味がないもの」
「あのな千里……って、それどこから見付けてきたんだ」
橘さんが急にソワソワし始めた。
こんなにも慌てふためく彼を見るの、初めてかも。
「いいなぁ、毎年こうやって結婚指輪をプレゼントしてもらってさぁ。羨ましい」
リングケースを両手に大事そうに抱えていた。純白、シルバー、水色、ピンク、赤……全部で五色。
橘さんただ一人を一途に愛し続けた、柚原さんの想いがたくさん詰まった最高のプレゼント。
橘さん、柚原さん。末長くお幸せに。
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