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番外編 お兄ちゃんの歪んだ愛情

遥香の時も、嬉しくて泣いてばかりいた彼。 それは今もちっとも変わってなくて…… 「未知、ちゃんと二人いるって、良かった。本当に良かった」 モニターの画面越しに、ようやく我が子と対面を果たした彼。嬉しくて泣き出した。 大きい体を震わせ、強面の顔をくしゃくしゃにして。見た目と違い涙もろくて、不器用なまでに優しい彼。 「橘に泣くなって言われたんだが……ごめんな、みっともないよな」 苦笑いしながら、涙を手の甲でごしごしと拭っていた。 「いゃ~ん、ちっちゃくてかわいい‼」 彼の隣に座っていた千里さんも黄色い声を上げ、感極まったのか涙ぐんでいた。 「お姉さん、少しお静かに」 南先生の苛立った声が診察室に響いたちょうどその時だった。ブチっと鈍い音がして真っ暗になったのは・・・ 「おかしいわね停電なんて」 先生がお腹を蒸しタオルで拭いてくれて、彼が服を直すのを手伝ってくれているうちに、すぐに明るくなったけれど、「何かが変だ」って彼。顔色か変わり、鋭い目付きで室内をぐるりと見回した。 「未知‼」 「未知さん、千里‼」 橘さんと柚原さんも何らかの異変を感じたのだろう。血相を変え診察室に駆け込んできた。

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