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番外編 お兄ちゃんの歪んだ愛情

デスクの回りや、パソコンの周辺機器を確認していた柚原さんが何かに気が付いて。机の上にあったメモ紙に何かを書き始めた。 『盗聴器最低でも2つ。遥琉、未知と先生を連れて廊下に出ろ。橘も、千里も気を付けて廊下に出ろ。スカルはすぐ近くにいる』 メモを見せられた彼と橘さんの表情に緊張が走った。 「未知、俺が付いてるから安心しろ」彼に手を繋いで貰って、ベットから下り、そろりそろりと忍び足で扉に向かった。 「扉の向こうにスカルがいるかも知れないから、俺が開ける」 「あれだけの若い衆がいるんだ。大丈夫だろ」 「相手はプロの殺し屋だ。甘く見ない方がいい」 目を閉じて一呼吸ついてから、上着のポケットに手を突っ込む柚原さん。取り出しのは拳銃だった。刑事ドラマでは見たことがあるけれど実物を見るのは生まれて初めてで。黒い固まりに恐怖のあまり足がすくんでしまった。 柚原さんが扉に手を置いたまさにその時だった「柚原」橘さんが柚原さんのことを初めて呼び捨てで呼んだ。 「愛おしい妻を残し先に死ぬわけにはいかないだろ」 にんまりと意味深な笑みを浮かべ、柚原さんは扉を一気に開けた。

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