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番外編 お兄ちゃんの歪んだ愛情

「猿芝居ってどういうことですか?」 「怪我をしたらどのぐらい俺の事を心配してくれるか見てみたかったんだ」 血が滲む肩の付け根あたりを押さえながらムクッと起き上がる柚原さん。 「はぁ!?あなたはどこまで馬鹿なんですか。こっちは心臓が止まるくらい心配したんですよ」 「不安なんだよ。お前が本当に俺を好きなのかって」 「私は……」 そこで言葉を止めると指に嵌めてある指輪に目を落とす橘さん。人差し指の腹でそっと優しく撫でた。 「……好き……ですよ」 「聞こえない」 ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる柚原さん。 「ちょっと!!人が真面目に話しをしているのに、ふざけているんですか?」 こんなにムキになって怒る橘さん、初めて見るかも。 「ふざけてなんかいない。俺だって真面目だ」 「なら一回しか言いませんよ。私はあなたが好きです。これで満足でしょう……柚原!!だから、待っ……」 柚原さんが橘さんの腰に腕を回し抱き寄せると、有無を言わさずあっというまに唇を奪い去った。 ちょうど救急箱を手に診察室から戻ってきた南先生も呆気に取られ、完全に固まっていた。 「未知、俺達も負けずにするか?」って彼。 冗談だとも本気だともとれる発言に戸惑っていると、彼の長い指に頤をくいっと掬い上げれ、チュッと触れるか触れないかの口付けをされた。

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