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番外編 お兄ちゃんの歪んだ愛情

【は、遥琉さん‼】 まさか南先生や、お兄ちゃん、若い衆の皆さんの前で堂々とキスをされるとは思わなくて。 顔から火が出るくらい恥ずかしかった。これからどんな顔をして会えばいいの⁉頬っぺたをこれでもかと膨らませて彼を睨み付けた。 「怒った顔もなかなか可愛い。未知のこと、ますます好きになった」 反省するどころか嬉しそうに笑っていた。 一方、橘さんと柚原さんも僕らと似たようなやり取りをしていた。 「柚原さん‼」 「そんなに怒るなよ。可愛い顔が台無しだ。それよりも膝を貸してくれ」 橘さんの膝の上にゴロンと横になり、怪我の治療を南先生に頼むのかと思っていたら寝たふりを決め込んだ。 かすり傷だから治療はしなくていいと、頑なに拒否する柚原さんに、ため息をつきながら、代わりに治療を頼んだのは橘さんだった。 南先生が救急箱から消毒液の容器を取り出すと、なぜか柚原さんの顔色が変わった。眉を寄せぶんぶんと首を振って橘さんの腰にしがみついた。 「図体がデカイ割りには相変わらず中身は子供だな」 「昔とほんと変わんない」 「本当に困ったものだ」 裕貴さんと千里さんが呆れて苦笑いを浮かべていた。 「柚原は、昔から医者が大っ嫌いなんだ。特に消毒液の匂いと滲みるのがだめらしい。意外だろ⁉」 彼も笑っていた。 柚原さんも見た目とは違い、本当は心が繊細で優しい人なのかもしれない。嫌々を繰り返し橘さんに甘える仕草が、駄々を捏ねる一太の姿に重なって、思わず噴き出しそうになり慌てて堪えた。

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