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番外編 お兄ちゃんの歪んだ愛情

「たく、泣き虫なんだから」 濡れた目蓋の縁をそっと指先で拭ってくれた。 「未知のこの想い、きっと伝わるよ」 これでも無性に腹が立ってると彼。お兄ちゃんの態度次第では殴りかかるかも知れない。そしたら茨木さんとの約束を破ることになるからと、メモ帳を裕貴さんに託した。 「裕貴さん、本部の方がお見えになりました」 「そうか」 院内に緊張が走った。 相手は昇龍会の幹部。菱沼組の若い衆にとってはまさに雲の上の存在。慌てて一列に並びクの字に腰を曲げた。 やがてハイブランドのダークスーツを身に纏った強面の男性が数人、大勢の舎弟を引き連れて姿を現した。 周囲を威嚇しながら先陣を切って歩くサングラスの男性を一目見るなり「えぇ~~‼」千里さんが甲高い悲鳴を上げ、慌てて裕貴さんの背中に隠れた。 「尊さんよ、組長と会長が首を長くしてアンタを待ってる。一緒に来てもらおうか?」 男性の隣にいた禿頭の大男が、お兄ちゃんの髪の毛を乱暴に掴むと、そのまま男性達の前に引きずり出した。 お兄ちゃんは抵抗もせず、小さく体を丸め蹲っていた。 「未知に感謝しろ」 裕貴さんが僕が書いたメモをお兄ちゃんに突き付けた。 「未知に!?」 わなわなと震える手でメモを読む上げるお兄ちゃん。最後は涙に崩れた。 「ごめんな未知。ごめん……パパ……」 お兄ちゃんのところに勇気を出して駆け寄ろうとしたら彼に止められた。

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