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番外編 お兄ちゃんの歪んだ愛情
「コイツを連れていけ、長居は無用だ」
禿頭の大男が男たちに命じると、大勢の舎弟がお兄ちゃんをぐるりと取り囲み、両腕をがっしりと掴むとそのまま連行していった。
「ちょっと、行かなくていいの?」
先陣を切って歩いてきた幹部の男性にびくびくしながら声を掛ける千里さん。
「妻を置いて帰れる訳ないだろ」
男性がサングラスを外し胸のポケットにしまうと、無表情で千里さんの所にツカツカと歩み寄った。
「良かったな千里」
「笹原も愛妻家だからな」
彼と裕貴さんに冷やかされ真っ赤になる千里さん。
「怒ってるんでしょ」
プイッと顔を逸らした。
「怒ってるよ。当たり前だろ。橘がいなくなり、遥琉がいなくなり、気付いたら千里と裕貴までいなくなってて……俺だって、未知を実の妹のように思ってるんだ。俺だけ置いてきぼりなんて・・・」
ふて腐れながら不満を口にする笹原さん。何かに気が付いたみたい。
「裕貴、橘の隣にいる男は⁉」
「菱沼組の幹部で、菱沼ビルディングの取締役の柚原だ」
「俺は夢でも見てるのか⁉あの橘が遥琉や未知以外の男と一緒にいる。しかも手を繋いで・・・」
目を見張りかなり驚いていた。
「橘の尻に敷かれたいと自ら志願し、プロポーズした」
「へぇ~~変わった物好きもいるものだ」
橘さんに背中を支えて貰いながら立ち上がり、笹原さんに頭を下げる柚原さん。
「初めまして、柚原です」
「笹原です。義兄《あに》がお世話になってます」
ぎこちなく挨拶を交わすと「帰るぞ」片腕で軽々と千里さんを肩に担いだ。
「ダーリン、パンツ見えちゃうから下ろして!それにアタシ帰んない!」
「誰が家に帰るって言った?ホテルに行くに決まってるだろ。最近忙しくて全然構ってやれなかったから、他の男をたぶらかそうととしていたんだろ?」
「そんな訳ないでしょ‼柚原とは本当に何でもないの‼ただの友達」
「じゃあ聞くが、なんでこんな格好してるんだ?一晩かけてじっくり聞いてやる」
「ちょっと何でそうなるの‼」
千里さんと笹原さんのやり取りに、永原先生と南先生が呆気にとられていた。
すみません、お騒がせして。
彼と平謝りするしかなかった。
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