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番外編 かけがえのない大切な家族とともに生きる

「お前には柚原がいるだろ。邪魔するな」 彼の動きがぴたりと止まり、冷ややかな声をドアのほうへ投げかけた。 【え・・・⁉】 その言葉に驚き、恐る恐る彼が見ている方に視線を向けた。 いつの間にか少しだけ開いていたドアが、ゆっくりと大きく開いて、強張った表情で僕たちを見据えながら橘さんが入ってきた。 「別に邪魔するつもりはありませんよ。だだ、一太くんとハルちゃんが五分ほど前に目を覚まし、パパとママがいないと二人して大泣きしてまして・・・急を要することなのでお知らせした方がいいかと思いまして」 顔色一つ変えることなく淡々と答える橘さん。目のやり場に困る状況にも関わらず一切動じていない。 「分かったすぐ行く」 彼がシャワーのホースに手を伸ばした。 「別にすぐ来なくても大丈夫ですよ」 「さっき急を要するって言ったろうが」 不満を露にする彼。 「二人にパパと勘違いされた柚原さんが、頑張って寝かし付けているので、あと十分経過したら、未知さんを迎えに来ます。それまでゆっくりしてて構いませんよ」 橘さんの視線が背中に痛いほど突き刺さってきて、身の置き場に困った。 「それと遥琉。未知さんは妊娠初期の大事な体です。タイル張りの床では冷えるから、いちゃつくなら風呂の中でして下さいと何度言ったら分かるんですか。体への負担を考えて十分以内とも言いましたよね⁉私の可愛い娘である未知さんにあまり無理をさせないで下さいとも言いましたよね⁉あなたは何度言ったら理解してくれるんですか⁉聞いてますか⁉」 矢継ぎ早に耳の痛いことを捲し立てられ、橘さんの毒舌ぶりにたじたじになっていた。 「そんなに目くじらを立ててると柚原に言われるぞ」 「分かってます。可愛くないってでしょう」 少しだけ頬を赤らめてプイッとそっぽを向く橘さん。そのまま浴室をあとにした。

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