317 / 3632

番外編 襲名式

「おう柚原」 二人ともハイブランドのダークグレイのスーツに身を包んでいた。 向かって右側の男性は彼ぐらいの年で、すらっと背が高く、緩くウェーブのかかった黒髪に男っぽい精悍な顔立ちをしていた。意思の強さを感じさせる濃い眉にきりりと結ばれた唇が印象的だった。 左側の男性もまた背が高くて、がっしりとした大柄の体格だった。年は柚原さんより上かな? 「鷲崎・・・和泉・・・」 二人の顔をチラ見し寝たフリを決め込む柚原さん。 ゛わしざき゛って、どこかで聞いたような…… ゛いずみも゛どこかで…… 「兄弟に向かってその態度はないだろ」 「そうだぞ」 二人の視線が橘さんへと向けられた。 「初めまして、橘と申します」 柚原さんを膝枕したままにこっと笑みを浮かべ恭しく頭を下げた。 「どう見ても男・・・だよな⁉」 「あぁ・・・」 二人とも吃驚仰天し穴のあくほど橘さんを見つめていた。 「いちいち驚くことでもあるまい」 ぼそっと柚原さんが呟いた。 「まぁ、それもそうだな。縣も遥琉も、秦の坊もそうだし……で、君は?」 左側の男性と目が合い声を掛けられた。 「その遥琉が愛して止まないカミさんだ。名前は未知。三人目、四人目妊娠中だ。色々と事情があって喋ることが出来ない」 代わりに柚原さんが答えてくれた。 「男なのに!?」 「だから未知は両性」 飲みこみが悪い二人に苛立つ柚原さん。 「あぁ、なるほど」 「そうなんだ」 ようやく納得してくれた。 「鷲崎だ。宮城にある鷲崎組の組長だ。で、こっちが……」 左側の男性が先に名前を名乗り、隣の男性に目を向けた。

ともだちにシェアしよう!