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番外編 襲名式

「言いたくないなら無理に言わなくていいぞ」 「やはり遥琉に隠し事は出来ないな」 観念したように和泉さんがその場にゆっくりと腰を下ろした。 「……国内に潜伏している真沙哉と大上と、S警察署の八巻の暗殺を本部《うえ》から命令された。刺し違えてもいいから殺せって。茜音の腹の子供の父親が誰か、ようやく分かったんだ。茜音を拉致監禁し、乱暴し妊娠させた相手が誰か………」 助けられなかった後悔と何も出来なかった悔しさを滲ませて、血の吐く思いで一言、一言紡ぎ出す和泉さん。 「………大上だよ。アイツが嫌がる茜音を無理矢理………真沙哉やその舎弟は止めもせずそれを喜んで見ていた。それだけじゃない。それを取り締まるはずの八巻が大上や真沙哉の悪事に荷担していた。だから事件が公になるまで半年もかかった。それまで事件性はなし、ただの家出だと全然取り合ってくれなかった。遥琉が命がけで助けてくれたのにな。オレは茜音の命を救うことが出来なかった……」 嗚咽交じりの声とともに悔し涙が頬を伝い零れ落ちた。 「もういい」 彼が和泉さんの肩をポンポンと宥めるように優しく叩いた。 「和泉、お前は何も悪くない。悪くないんだ」 それまで黙って聞いていた柚原さん。 橘さんに促されようやく口を開いた。

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