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番外編 襲名式
「柚原は悪くない。五年以上想いを寄せていた人とようやく結ばれたんだ。足を洗うのが普通だ。オレはどうしても遥琉に恩を返したかっただけだ。家庭を誰よりも大事にする遥琉の家族を何がなんでも守りたかった。だから引き受けた。本部《うえ》から幹部の座布団を用意して待ってる、報酬も支払うって言われたけれど全部断った」
「死ぬつもりか?お前にだって三年以上好きな人がいるだろ」
「どうせ報われない恋だ。諦めはついてる」
「和泉、考え直せ。今なら引き返すことができる」
「もういいんだ」
何とかして引き留めようと、説得を試みる柚原さん。でも和泉さんの決心は揺らぐことがなかった。
「和泉これだけは言っておく。菱沼組と龍一家、縣一家は何があろうとお前の味方だ。だから無茶だけはするな、いいな」
「遥琉………ううん、兄貴……ありがとう」
涙をごしごしと手の甲で拭う和泉さん。
「私でよければいつでも相談にのりますよ。こう見えても一応は弁護士なので」
「橘さん感謝します」
「ちょっと待て!二人きりで会うのは絶対にダメだ。まずは俺に連絡を寄越せ」
柚原さんが慌てて話しに割り込んだ。
「遥琉だけじゃなかったんだ。お前もか」
「煩いな」
痛いところをつかれ、不貞腐れてそっぽを向く柚原さん。
それを見た和泉さんがププッと思わず吹き出した。
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