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番外編 襲名式

「じゃあな柚原。鷲崎さんが待ってるから」 「おう、いつでも連絡を寄越せ」 「あぁ」 頭をもう一度軽く下げそそくさと部屋を後にする和泉さん。足取りも軽く鷲崎さんのあとを追い掛けていった。 「10年たった今も゛鷲崎さん゛か・・・」 「押し倒してもいいからさっさとモノにしろって、人を散々焚き付けておいて、自分は全く気が付いていないんだから困ったもんだ」 「だな」 相槌を打つ彼と柚原さん。 全く話しに付いていけなくて、橘さんの服の裾を掴み、ツンツンと引っ張った。 「私も詳しくは・・・」はじめ軽く頭を横に振られたけれど、恐らくですがそう前置きした上で耳元でボソボソと教えてくれた。 「柚原さんから聞いた話しでは、茜音さんを失ったあと、何度も自殺未遂を図ったそうです。結婚して僅か4日・・・全てを失ったんですから仕方ありません。鷲崎さんは遥琉に頼まれて和泉さんを手元に引き取ったんです。それから7年間寝食を共にし、ずっと一緒だったんです。それがある日突然、吉柳会に行けと言われて。離れて初めて自分の気持ちに気がついたんでしょうねきっと・・・」 橘さんの話しを聞いて、鈍い僕でも何となくだけど事情を察することが出来た。 和泉さんがずっと片想いしている相手が誰か。 そしてその相手が全く気が付いていないということに。 「未知、まずは自分の体を大事にしろ。アイツらのことは構わなくていいからな」 彼の目が、首を突っ込むなよ‼余計なことするなよ‼そう言っているようだった。 お節介やきなのは、遥琉さんに似たんだよ、きっと。

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