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SS橘さんと柚原さん

外に行きたいのは遥香だけじゃない。この俺もだ。一刻も早く出たくてうずうずしている。 「ぱぱたん・・・・・?」 不思議そうに顔を覗き込んでくる遥香と目が合ってかなり慌てた。 「いや、何でもないんだ。お靴履いて待ってようか」 「はぁ~~い!」 小さな手を上げて満面の笑顔で返事をする遥香。まさに天使。 すでに重度の親バカだ・・・・ 玄関で遥香に靴を履かせていたら、未知が上に羽織るようにと薄手のジャンパーを持ってきてくれた。 でも何で未知だったんだ? 誰よりも一番、それこそ死ぬほど愛した遥琉を何でこんな子供に、しかも男でもない女でもない、両方の性別を持つ彼にいとも簡単に渡したんだ? 那奈や他の愛人には焼きもちを妬いて、遥琉にしっちゅう食って掛かっていたのに。それなのに、なぜか未知だけは実の娘のように可愛がっている。 「ありがとう未知」 俺に何か言われるとでも思ったのか。いちいち身構えなくてもいいのに。 顔が怖いのは元々。てか、未知の旦那の方が俺よりも顔が怖いはず。 何かを伝えようと懸命に身ぶり手振りする姿が可愛くて、優璃ならすぐに理解するんだろうが、悪い俺にはまだまだ時間が掛かりそうだ。 「未知さん、ちゃんとオムツと着替えは持ちましたよ。一時間で戻ります」 言いたいことが通じて未知の表情が一気に明るくなった。 「柚原さん、行きますよ」 「はい」 荷物を渡され、遥香と手を繋ぎ先に玄関を出た優璃のあとを追い掛けた。 兄貴や組の連中の前では絶対にベタベタしない。 あくまで他人行儀。 どんなにツンツンしていても、外に出ればーーーー 立ち止まって恥ずかしそうにわざとそっぽを向いて。 空いている左手を差し出して、俺が追い付くのを必ず待っていてくれる。

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