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番外編 拗れた片恋

「未知」そぉーと足音を忍ばせ千里さんが入れ違いに入ってきた。 「手伝おうか?」 何をどう書いていいのか考えあぐねていた僕を、見るに見かね声を掛けてくれたみたいだった。 「こういうときは単刀直入に行くのがイチバンよ」 【単刀直入……?】 「そう、ななみちゃん……えっと、和泉の下の名前ね。数字の七に海で七海。女の子みたいな名前だから本人気にして公にしてないけどね」 【和泉七海さんか……素敵な名前、全然変じゃないのに……】 「例えば、七海ちゃんは貴方のことがずっとずっと好きです。死ぬ気でいる彼を止められるのは貴方しかいません。とか、どうかしら?」 僕とは違い恋愛経験が豊富な千里さんの言葉には説得力があった。 「あらやぁね~アタシ、ダーリン以外で付き合った男性《ひと》そんなにいないわよ」 千里さん苦笑いを浮かべていた。 「遥琉にラブレターを書くつもりで書けば大丈夫」 千里さんに励まされ一文字ずつ丁寧に入力した。 送信ボタンを押すときが一番緊張し、ドキドキした。なるようにしかならないもの。そう前向きに考えたら吹っ切れた。 ふぅ、疲れた…… たった一文を書くのに30分近くも掛かってしまった。 額の汗を拭いていたらすぐに返事がきた。メールじゃなくて電話で。

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