340 / 3283

番外編 拗れた片恋

「随分と前のことだから覚えてないと思うけど、直ちゃんや七海ちゃん、それに組の若い子たちを連れてアタシのショー観にきてくれたことあったでしょ」 『ちゃんと覚えるよ、3ヶ月くらい前だろ?』 「じゃあ、そのとき言ったコトバ、覚えてる?」 『悪い、思い出せない』 「男同士で恋愛なんかあり得ない。ましてや結婚なんて……そう言ったのよ。七海ちゃんそれ聞いてすっごくショックを受けてた。好きな男《ひと》と結ばれてようやく幸せを掴んだ心や未知にひそかに憧れていたから尚更ね……」 『ちょっと待て!!オレもそう思うって、和泉確かにそう言ってたんだぞ』 「鷲崎さんには、揺れ動く男心が分からないの?男が男を好きになって何が悪いの」 『話しが見えないんだが………』 鷲崎さん黙り込んでしまった。 (何書いたの?)千里さんに小声で聞かれ、メモ帳にペンを走らせた。 「いい、未知が送ったメールを代読するわよ。和泉さんは、ずっとずっと一途に貴方を愛しています。復讐を果たすため命をかけて大上さんと刺し違える覚悟を決めました。和泉さんを止められるのは貴方だけです。菱沼組の姐さんがこんなにも心配してんのよ。鈍感なのは分かるけど、いい加減七海ちゃんの気持ちに気付いてあげたら?」 『じゃあ、何をどうしろっていうんだ?』 動揺しているのか声が微かに震えていた。

ともだちにシェアしよう!