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番外編 拗れた片恋

「どうした未知⁉」 怪訝そうに顔を覗き込まれ我に返った。 ううん何でもない。慌てて首を横に振った。 「もしかして九鬼総業の事を考えていたか⁉」 【え⁉何で分かったの⁉】 見事に胸の内を看破されていた。 「未知が何を考えているか、顔を見れば分かる。思ったことがすぐ顔に出るからな」 柔らかな笑顔でお腹を優しく擦ってくれた。 「先代が病に倒れ、跡目を正式に決めないまま亡くなって、娘婿の若頭補佐を支持する幹部と、本部長である先代の弟を支持する幹部が対立していて、お家騒動の渦中にある。聞いた話しによると本部長は真沙哉の若い頃に瓜二つらしい。シノギの為なら平気で人を殺める。人を人とは思わない冷酷な男らしい。対する若頭補佐は穏健派で部下からの信頼も厚い」 彼の手がTシャツの裾を捲り中へと潜り込んでいった。 【は、遥流さん‼】 慌てて彼の手を止めようとしたけれど、悪戯が大好きなその手は脇腹を滑り落ち、下腹部へと伸びていった。 「別にいいだろ⁉減るもんじゃないし」 悪びれる様子もなくしれっとして答えると、愉しげにあちこち触りだした。 【遥琉さん、くすぐったい‼】 身体を捩り、何とか腕の中から逃げようとしたけれど、がっしりと腰を掴まれ動きを封じられてしまった。

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