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番外編 拗れた片恋
「オヤジ大変です!!」
ドンドンとドアを激しく叩く音に彼の表情がみるみるうちに強張っていった。
「なんでいつもいつも、こう邪魔が入るんだ」
ため息混じりにぼやきながら、それでも寝たふりを決め込む彼。
「遥琉、取り込み中なのは分かるが、緊急事態だ」
一分と経たず今度は柚原さんの声が聞こえてきた。
「何があった?」
「ーー大上が死んだ」
一瞬、時間が止まったかのように静まり返った。
「………そうか」
さほど驚くこともなく淡々と答える彼。
「ごめんな未知」
額に軽く口付けをしてくれた。
【いちいち謝ることじゃないのに。大丈夫だから……】
一太と遥香を起こさないように、そぉーと手を伸ばし、部屋の灯りを付ける彼。
そのまま起き上がると、着替えを取りにクローゼットに向かった。
「すぐ戻るから」
素早く着替えると、バスローブを僕の肩に羽織らせてくれて。
足音を忍ばせ静かに部屋を出ていった。
彼に言われ電源をオフにしていたスマホのスイッチを入れると、那奈姉さんと心さんからの着信履歴が何件も残されていた。
先に誰に連絡しようかと悩んでいたら、心さんから電話がきた。
『未知、元気か⁉』
あっ、この声‼
心さんじゃない。裕貴さんでもない。笹原さんだ。
『寝ていたのに起こしてすまない。遥琉の携帯に何度電話を掛けても出ないから、悪いとは思ったんだが未知の携帯に掛けたんだ』
笹原さんも彼や柚原さん同様取り乱すことなく冷静そのものだった。
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