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番外編 横恋慕

今まで一切口を開かず部屋の出入口にいた鳥飼さんが、くすっと急に笑い出したから驚いた。 だって彼が笑う顔、初めて見たんだもの。 「正直、野郎同士の夫婦なんて有り得ないと思っていた。でも優璃と柚原を見て、考えが変わった」 「たまたま好きになった相手が同性だった、それだけの事だ。俺も、優璃も未知も・・・なぁ鳥飼、そろそろお前も身を固めたらどうだ⁉」 「まず相手がいない」 「はぁ⁉冗談だろ⁉キャバ嬢にモテモテだって聞いたぞ」 「いや、その・・・」 容赦ない突っ込みにたじたじになる鳥飼さん。 しどろもどろになりながら、独り言をぶつぶつと口にしていた。 颯人さんがコンビニで購入してきてくれたお弁当をレジ袋から取り出す橘さん。数を数えて何かに気がついたようだった。 「鳥飼さん、帰らないんですか⁉」 「邪魔していないんだ。別にいても構わないやろ」 「では食事が終わるまで大人しく待っていただけますか⁉」 「俺だけ晩飯抜き?」 不満を口にし不貞腐れる鳥飼さん。 その姿が誰かさんとそっくりで、思わずクスクスと声に出して笑ってしまった。

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