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番外編 横恋慕
「普通笑うか!?」
じろりと脅すように睨み付けられた。ただでさえ顔がこわいのに、そんなに睨まないでほしい。
えへへ、笑って誤魔化そうとしたけれど、彼同様鳥飼さんにも通用しなかった。
【あまり食欲がないから食べてください】
ビクビクしながらお弁当を彼の前に差し出した。
「何だ、食べないのか?」
冷ややかな視線を痛いくらい感じながら、小さく頷くと、
「少しくらい食べろ。お前が残したので充分だ」
予想もしていなかったことを言われ、驚いて上目遣いに鳥飼さんを見ると、にっこりと笑顔を浮かべていた。
さっきまで僕のこと睨んでいたのに………
「あの、鳥飼さん」
橘さんがわざとらしく咳払いした。
「人妻を口説かないで頂けますか?」
「口説いて何が悪い」
「未知さんは遥琉の………」
「そんなこと分かってるよ。なぁ、未知。遥琉と別れて俺のところに来る気はないか?」
【へ!?………】
最初、僕を困らせようとして冗談を言ってるのかと思った。
でも、鳥飼さんの目は真剣そのもので。
瞳を真っ直ぐに覗き込まれて、にっこりと微笑み掛けられた。
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