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番外編 横恋慕
あのあとすぐに電話で呼び出された鳥飼さん。何事もなかったように帰っていった。
隣の部屋に用意して貰った布団に横になるなり、疲れがどっと押し寄せてきて、五分と経たず眠りに落ちた。
夜中に人の気配を感じてふと目が覚めた。
昨日まで彼と子供たちで川の字で寝ていたから、てっきり一太がトイレに行きたくなったのだと思った。
でも薄暗い部屋の中はしーと静まり返っていて物音一つしなかった。
【あっ、そうだ。彼も一太も遥香もいなかったんだ】
橘さんと柚原さんは、和泉さんと同じ部屋で横になってるはず、だからこの部屋には僕以外誰もいない。
いないはずなのに・・・
寝返りも打てないのはどうして⁉
寝ぼけ眼で周囲を確認し、自分が誰かに抱き締められていることに気が付いた。
【嘘・・・・・】
冷水を掛けられたかの様に背筋が凍りつき、眠気が一気に覚めた。
「動くな、こっちは寒いんだよ」
腕を引っ張られ、分厚い胸にぎゅっと抱き寄せられて、恐怖のあまりパニックに陥った。
彼の胸に手をつき、何とか離そうとしたけれどびくともしなかった。
【鳥飼さん、お願いだから離してください!】
喋れたらどんなにいいか。
悲鳴を上げることも、助けを呼ぶことも出来るんだもの。
喋れない自分が情けなくて無性に腹が立った。
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