362 / 3594
番外編 横恋慕
「妊婦をどうにかしようなんて考えてねぇよ」
あくびをしながら眠り眼を手の甲でごしごしと擦る鳥飼さん。
「喧しい女はどうも苦手なんだ。未知みたいな物静かな子が……ーー」
そこまで言うと急に静かになった。
おっかなびっくり顔をそぉーと覗き込むと、すやすやと穏やかな寝息を立てて眠っていた。
彼以外の大人のおとこのひとの腕の中にいる。
やましいことをしている訳じゃないのに、そわそわと落ち着かなくて、結局一睡も出来ないまま朝を迎えた。
窓のない部屋だと思っていた暗い部屋に小さな高窓があったのか、朝の光が射し込んできた。
「うっ・・・ん」
寝言を口にしながらゴソゴソと身動ぎする鳥飼さん。
シャープな輪郭に、描いたようにくっきりと濃い弓形の眉が、彼の男らしさを際たださせているようだった。
女性なら絶対にほっとかない。それなのに……
「ジロジロ見るんじゃねぇよ」
固く閉じていた目蓋がゆっくりと開き、毛布ごと抱き締められた。
「これでも我慢してんだ。襲いたくなるだろ⁉」
ニヤリと口角を上げ、下肢をぐりぐりとお腹に擦り付けてきた。
【と、とりかいさん‼】
彼のはすでに熱を帯び、布越しでもハッキリ分かるくらい堅くなっていた。
【昨夜言ったことは嘘だったの⁉】
耳まで真っ赤しぶんぶんと首を横に振った。
僕には遥琉さんがいるの‼
遥琉さん以外の男性 とは死んでも絶対嫌‼
抵抗しても無駄だと分かっていたけれど、何もしないよりはましと、彼を睨み付け、手をグーに握り、胸をぽんぽんと叩いた。
「怒った顔もなかなか可愛いな」
って全然懲りてない。
ともだちにシェアしよう!