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番外編 九鬼の倅
困ったことに九条組の組事務所に移るまで丸二日。寝るとき以外、鳥飼さんは僕の側から片時も離れようとはしなかった。橘さんや柚原さんに何を言われようが一切聞く耳を持たなかった。
駅前の繁華街の一角に九条組の組事務所があった。《九条コンサルティング株式会社》として、オフィスビルの一階にテナントとして入っていた。
まだ動くことが出来ない和泉さんを布団ごと包み、大人四人がかりで車で移動して来たものはいいものの、なぜか鳥飼さんまで付いてきたから、九条組の幹部の皆さんは一様に眉を潜め、怪訝そうな表情を浮かべた。
「鳥飼‼何でてめぇがここにいるんだよ‼」
一人の若い舎弟さんが顔色を変え鳥飼さんに食って掛かった。
相手はあの九鬼総業の若頭。
「睦 止めんか」
「待てや!」
皆さん血相を変えて慌てて引き剥がそうとしたけれど、彼はそれを振り切って胸ぐらに掴み掛かった。
「相変わらず威勢がいいな」
「五月蝿い!」
その舎弟さんは僕とあまり年が変わらないかも。襟足で短めに揃えた黒髪に整った目鼻立ちをしていた。
「鼻っ柱が強いのは姉譲りだな」
「黙れ!」
自分よりも一回りも二回りも年上の鳥飼さんに噛み付く舎弟さん。
回りの幹部さんたちの方がヒヤヒヤしていた。
【橘さん】袖を掴みツンツンと引っ張った。
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