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番外編 人質

そんなことを考えていたら背後に当の本人が立っているのに全く気が付かなくて。声を掛けられて心臓が止まるくらいドキッとした。 しかも怪訝そうに顔を覗き込んできた彼と目が合ってしまった。 【あ、あの・・・・】 意識している訳じゃないに、耳まできっと真っ赤になってる。これじゃあ変に誤解されてしまうかも知れない。 慌てて顔を逸らした。 「同性の裸をわざわざ覗こうとは思わねぇよ。ほら着替えだ」 げらげらと笑いながら、ふわふわの真っ白なパジャマを渡すとすぐにバスルームからいなくなった。 モコモコしてて手触りも良くすっごく暖かそう。これならお腹が冷えずに済むかも知れない。ほっとしたのも束の間。バサリと落ちた物を拾い上げて見ると、それは女性もののシルクのショーツとキャミソールだった。 冷や汗をかきながら慌ててパジャマの隙間に押し込んだ。 鳥飼さんが一体何を考えているか、訳がわからない。 「俺が用があるのは福井の方や。はよう、出さんかい」 バスルームから出ると鳥飼さんがスマホを耳にあてながら凄みをきかせ電話の相手を威喝していた。その相手というのは…… 「はぁ笹原?誰やお前」 その名前を耳にするなり、体が無意識に反応し、気付けば鳥飼さんの側に駆け寄っていた。 「何や知り合いか。なら話しが早い」 スマホを耳にあてがわれた。 『……もしかして未知……か?』 この声は間違いなく笹原さんだ。回りがガヤガヤとなにやら騒々しい。

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