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番外編 人質
『ん?今確か未知って……』
バタバタと慌ただしく駆け寄ってくる足音。懐かしい声が受話器越しに聞こえてきた。
『未知ちゃん、えっと……ごめん、何を言うか忘れちゃった』
甥っ子相手に何でそんなに緊張するかな。
秦さんって本当に面白い。
『未知、必ず助けるからな』
『笹原、それ俺の台詞。何で先に言うかな』
笹原さんありがとう。秦さんありがとう。
泣きたいくらい嬉しくて。鼻を啜りながら何度も頷いた。
【えっ、ちょっと……!】
鳥飼さんの片方の腕が音もなく腰に回ってきてそのまま抱き寄せられた。不意打ちをくらい抵抗することも出来なかった。
「福井を出せ。さもなければ今すぐ未知を俺の女にする」
スマホを耳にあてがい声を張り上げる鳥飼さん。目は座り瞬きさえしない。
本気だ。
本気で僕を・・・・
「そうビクビクすんな、ハッタリだ」耳元に彼の息が触れてきて。小声でそう囁かれた。
でも言葉とは裏腹に、腕の力は緩めてはくれなかった。
『福井だ』やや間が開いて鋭い口調の声が漏れ聞こえてきた。
『用件を聞こうじゃないか。まずは未知から・・・・義妹《いもうと》からさっさと離れろ。話しはそれからだ』
「側にいるだけで何もしていない」
『はぁ⁉』
まるでこの状況を見ているかのようだった。
福井さんに楯突くのは得策ではないと判断したのか、腕の力を少しだけ緩めてくれた。
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