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番外編 二人の幸せは僕と彼の幸せでもある

行方不明だった九鬼総業の若頭が、反目関係にある昇龍会に寝返ったという情報は瞬く間に広がった。 『遥琉、未知に出会えたこと感謝している。色々と嫌がる事ばかりしてすまなかった』 鳥飼さんから送信されたメールを彼が渋々ながらも見せてくれた。 和泉さんの体を彼と柚原さんが二人で支えワゴン車に乗せ、後に続いて一太と遥香の手を繋ぎ車に乗り込もうとしたときだった。 先に九条組さんの事務所を発った裕貴さんが血相を変えて戻ってきた。 「九鬼が鷲崎といざこざを起こしサツに捕まった」 「鷲崎さんは?鷲崎さんも警察に捕まったの?」 和泉さんがシートから身を乗り出した。 「正確にいえば《《鷲崎さんの身内》》です」 スマホを片手で操作しながら橘さんが落ち着いた声で答えた。 「鷲崎さんの甥っ子の父親に、九鬼が随分と入れ込んでいて………信孝さんに事情を話して、先月からかくまっていて貰っていたんだ」 「おいおい甥っ子の父親って……冗談だろう」 彼も裕貴さんも驚いていた。 「たく、遥琉が留守の間よそのシマで好き勝手なことしてんじゃねぇよ」 柚原さんが吐き捨てるように口にした。

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