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番外編 二人の幸せは僕と彼の幸せでもある

「未知、お前さんには和泉と客人の相手をして貰いたい」 彼の後ろに座ろうとしたら度会さんに声を掛けられた。 「客人?」 彼の声色と目付きが変わった。 「未知にヘンな真似をするようなヤツじゃない。俺が保証する。だからそんなに怖い顔をするな」 度会さんが笑いながら彼の肩を軽く叩いた。 「未知、何かあったら和泉に助けを求めろ。いいな」 彼に二度三度と念を押され、和泉さんと客人が待つ離れへと向かった。 「誰がいるか分からないんだ。俺が開けるから未知は少し離れてろ」 若い衆の皆さんに両脇を抱えて貰い、足を引き摺りながらも何とか移動してきた和泉さん。息を切らしながら障子の前に腰を下ろした。 「吉柳会の和泉です」 中にいる人物に一声掛け、警戒しながら静かに障子を開けた。 「…………!」 目を見開き、わなわなと震える手で信じられないと言わんばかりに口元を覆う和泉さん。 「・・・・・見ないで下さい」蚊の鳴くような声でそう口にすると生々しく残る頬の傷をそっと手で隠した。 「こんな醜い顔・・・・見ないで下さい」 苦しげに眉を寄せて呻き声を上げた。 「一度は嵌めたはずの指輪を外している、遥琉からそう聞かされた時、お前が俺の前から姿を消すんじゃないか、そう思って逃げられる前に迎えに来た」 奥から姿を現したのは鷲崎さんだった。派手な色シャツを着用し、肩にスーツの上着を担いでいた。 「九鬼総業が乗り込んで来ているのに、悠長にそんな事を言ってる場合じゃあ・・・・」 「俺にとって九鬼より和泉・・・・いや、七海。お前の方が大事だ」 上着を畳の上に放り投げると和泉さんの前に腰を下ろした。

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