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番外編 七か月後
「自分から墓穴を掘ってどうするんだ」って彼が苦笑いしていた。
子供たちが飽きるからと千里さんに言われ、みんなでカメラの前に集まった。
遥香のお宮参りの時の倍の、総勢十九人の家族写真。
太惺が泣けば心望もつられ泣いて、遥香がぐずれば太惺も心望もくずる。何とも微笑ましい光景にみんなの表情も自然と綻び柔らかくなっていた。
ここにいないお父さんとお母さん。そしてお兄ちゃんの顔がふと脳裏に浮かんできた。
お父さんとお母さんは秦さんの庇護を受け身を隠すようにひっそりと生活をしている。
お兄ちゃんの行方は依然として不明。本部から箝口令が敷かれているのか誰も教えてはくれない。
生きていればいつか再会できる。そう信じて待とうと思う。
すぐ終わるはずだったのに撮影が終わるまで一時間近く掛かってしまった。ぐすって、駄々して、泣いて、よほど疲れたのか遥香も太惺も心望も熟睡して、しばらく起きそうもない。
これから度会さんの自宅で会合を兼ね食事会が執り行われることになっている。
大上さんが亡くなって以降、一切姿を見せることなく水面下で暗躍している真沙哉さんと、分裂した九鬼総業の対応について話し合いが持たれるみたい。
「大丈夫か?未知も疲れただろう?」
いつも僕や子供たちのことを気遣い、大切にしてくれる彼。甘えちゃいけない、そう思いながら結局は甘えてしまう。
うん、大きく頷くとにっこりと笑いかけてくれた。
その笑顔にドキドキして、恥ずかしさが一気に全身を駆け巡った。
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