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番外編 七か月後

「未知・・・・・」 微かに掠れた声で名前を呼びながら、鳥飼さんの顔がどんどん近付いてきた。 【彼以外の人とは絶対にイヤだ‼】 声にならない声で叫びながら、ぶんぶんと首を横に振った。 片方の手が頤に触れてきて、ぐいっと強引に上を向かされた。 「未知、愛してるんだ」 思いの丈をぶつけるように真摯な眼差しで瞳を覗き込んでくる鳥飼さん。 どんなに好意を寄せられても、僕は遥琉さんしか愛せない。 ママになってもなお昔と何ら変わらず深い愛情で包み込んでくれる。大切に扱ってくれる。 大好きでかけがえのない人。 優しくて素敵な旦那様ーー 子供たちにとっても優しくてイクメンのパパーー 万事休す。 もうダメだ・・・・諦めかけたまさにその時だった。 ふぎゃあーふぎゃあー 頭の上で、火がついたように心望が急に泣き出した。それにつられ、太惺もおぎゃーおぎゃーと大声で泣き出した。 いつもと違う子供たちの泣き声に、いち早く異変を感じた颯人さんが駆け付けて来てくれた。 「鳥飼、何でここにお前がいるんだ。出入り禁止のはずだろう」 「そんな約束、交わした覚えはない」 鳥飼さんがむくっと上体を起こした。 「動くなよ」低い声で脅され逃げないようにと右手首を強く掴まれた。 もう片方の手を上着の胸ポケットに入れ、拳銃を素早く取り出すと、引き金に指を置き颯人さんに向けた。

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