405 / 3632

番外編 七か月後

「未知の婚約者だったんだろ?遥琉に横取りされて憎くないのか?恨んでないのか?」 「俺は一度死んだ人間だ。オヤジに助けられ許してもらい今がある。だから、感謝しかない。弾よけとして、姐さんや子供たちを守るのが俺の役目だ」 挑発に乗ることなく颯人さんは冷静だった。 丸腰のまま、睨み返しながら一歩ずつ、ジリジリとその距離を詰めていった。 「姐さん!」 ドタバタと他のみんなも駆け付けてきてくれた。倒れている若い衆を見て、オヤジを呼べ、口々に大声を張り上げた。 「クソッ」鳥飼さんが苦虫を潰したような表情を浮かべ舌打ちをした。 「未知‼」僕の名前を呼ぶ彼の声がはっきりと聞こえてきて、鳥飼さんが哀しげな表情で振り返った。 その目は一緒に行こう、そう訴えかけていた。 【ごめんなさい】 僕には守るべき家族がいる。 こんな僕でも姐さんと慕ってくれる、家族同然の組のみんながいる。 目を伏せ首を横に振った。 「・・・・・」 鳥飼さんは何も言わず、手を静かに離してくれた。 すっと立ち上がると、颯人さんや組のみんなに銃を構えながら廊下に出ると、一発天井に向け発射させ庭に飛び出しそのまま風のようにいなくなった。 ひとしきり泣いてうとうとしていた太惺と心望。初めて耳にしたその音にびっくりしたのかふぎゃーふぎゃーと大声で泣き出した。 こんな状況でも遥香は、目を覚ますことなくバンザイの格好で熟睡していた。 「未知!」 彼が駆けつけてきてくれて、僕を抱き締めようとした。でも、千里さんの方が早かった。 「おぃ千里」 「こんなにも未知が震えているのよ。見てわからない?男の人に襲われてすごく怖かったはずよ。今はそっとしてあげて。遥琉は心ちゃんと太惺くんをあやしてあげて」 千里さんに言われて、ガタガタと手足が震えていることにようやく気が付いた。安心したとたん力が抜けて自分の体を支えられなくなり、千里さんの服に思わずしがみついた。

ともだちにシェアしよう!