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番外編 紅涙
「遥琉の女房がここに隠れているのは分かってるのよ。さっさと出てきなさいよ」
警護に当たっていた颯人さんら若い衆の制止を振り切り姿を現したのは咲さんだった。
「みんなパパとママの所に行くんだ!」
颯人さんが大声を張り上げると、晴くんが遥香の手を引っ張り、一太が未来くんの腕を引っ張って橘さんとナオさんめがけて一斉に走り出した。
「湍水さん、ご近所迷惑ですよ。お静かに願います」
信孝さんがすっと立ち上がり、庭に下りると、僕たちを守るように咲さんの前に立ち塞がった。
「一般人に用はないわ。怪我をしたくなかったから、そこにいる、遥琉の女房を………」
チラッと太惺や心望に目を遣る咲さん。
ニタリと薄ら笑いを浮かべた。
「喋れない女房より、赤ん坊の方が利用価値があるわ。2人ともさっさとこっちに渡して貰おうかしら」
「はぁ?」
咲さんの言葉に信孝さんの表情が一変した。
何があっても絶対に渡さない。腕の中の心望をぎゅっと抱き締め彼女をじっと見据えた。
橘さんも腕の中にいる太惺をぎゅっと抱き締めて、遥香や一太を守りながら、険しい表情で彼女を睨み付けた。
「ーーーそれでも未知と同じ母親か?」
今の今まで一度も信孝さんの怒った顔を見たことがなかった。穏やかで人当たりが良くて、いつもニコニコしている信孝さん。そんな彼が怒りにうち震えていた。
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