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番外編 紅涙

「捕まる訳にはいかないの。子供の命が掛かってるの」 狂ったかのように大声で喚き泣くと、その場に崩れ落ちた。 同じ母親としてほっとけなくて思わず身を乗り出すとナオさんに引き止められた。 「湍水さんが何を言っても信じちゃ駄目って彼が」 何で?首を傾げると、 「僕も詳しい事までは……」 決まり悪げに首を横に振られた。 もしかして聞いちゃいけないことを聞いたかも知れない……ナオさんに申し訳なくて目をそっと伏せた。 「下手な演技は止めろ」 真顔で表情一つ変えず信孝さんが淡々と言葉を発した。 「遥琉は騙せても、千里を騙すことは出来なかったようだな。彼女は度会さんがいずれ昇龍会の組長になると見込んだ女だ」 泣き声はやがて…… ………アッ、ハハハ………真っ赤な唇が歪み、嘲り笑う声が高らかに辺りに響き渡った。 不気味なその笑い声に一太や遥香が怯え、橘さんの脚にしがみつき、わなわなと肩を震わせ泣き出した。 晴くんや未来くんも怖くてナオさんの服をしがみ、背中に身を隠した。 「何だ、もうバレたのか」 声は男性のモノだった。聞き覚えのあるその声は確か………… 何度も何度も執拗にお兄ちゃんと一緒になって僕を付け狙ったあの人の声に似ていた。 思い出すだけで恐怖が甦り、寒くもないのにガタガタと体が震えだした。 「未知、ナオ」 千里さんの声がして後ろを振り返ると、そこにいたのはーーー

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