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番外編 紅涙

彼は何も言わなかった。この三日間何処で何をしていたか、一切何も話してはくれなかった。 夕食後、ナオさんと一緒に後片付けしていた。 お風呂場からは、一太と遥香、そして晴くんと未来くんのキャーキャーとはしゃぐ賑やかな声が聞こえていた。 「ごめんね、うちの子まで一緒にお風呂入れて貰って」 顔は怖いけど、子煩悩で面倒見がいい彼に、極度の人見知りで内気な未来くんがすんなりと懐いて、信孝さんやナオさんを驚かせた。晴くんも彼が大好きみたいだけど、自分は一番上だからと甘えたくても我慢している姿がなんともいじらしい。 なるべく昼間のことを忘れさせようと、みんな子供たちの前ではわざと明るく振る舞っていた。 「ナオ、太惺と心望の着替えは?」 バタバタと信孝さんが姿を現した。 「リビングで橘さんと柚原さんが準備して待ってるから、バスタオルに包んで一人ずつ連れていけば大丈夫って、さっきも言ったよ」 「そうなのか、ごめんな、子供たちの声が五月蝿くて聞こえなかった」 「もうしっかりしてよ」 「本当にごめん」 頭を手でくしゃくしゃとかきながらお風呂場へと戻っていった。 「子供が4人もいると毎日ドタバタで、てんやわんやじゃない?赤ちゃんのお世話だけで1日あっという間に終わっちゃうし。ここにいる間はいくらでも僕や彼を使っていいからね。休めるときに少しでも休まないと参っちゃうよ」 ナオさんの何気ない気遣い、優しさがじんと身に滲みた。 「ナオ!ナオ!」お風呂場から信孝さんの慌てた声が聞こえていた。 「ごめん、ちょっと見てくるね」 濡れた手をタオルで拭くとパタパタとスリッパの音を響かせて駆けていった。

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