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番外編 紅涙
「みんなお兄ちゃんのこと橘って名字で呼んでるでしょ。でも森崎だけは優璃って呼び捨てにしてたみたい。真沙哉が組を出るとき、森崎は頑なに付いていくのを拒んだみたいよ」
「あのな千里・・・・」
憮然として千里さんを睨み付けながら、大きいため息を二度三度つく橘さん。
すぐ側にいる柚原さんが気になるのか、様子を伺うように横顔を恐る恐るそぉーと見た。
「・・・・寝たのか?ソイツと・・・・」
焼きもちを妬いているのか、かなりむっつりしてる。
「私は遥琉みたいに節操なしじゃありませんよ。一緒にしないでください」
強がってはいるもののかなり動揺していた。こんな橘さんを見るの初めてかも知れない。
「痴話喧嘩はそのくらいにしておけ。心望が落ち着いて寝れないだろう」
こんな遅い時間にどこに出掛けるだろう。部屋着からスーツに着替えた彼が姿を現した。
聞きたいことが山のようにあるのに、また置いてきぼりにされるの?不安で胸がいっぱいになった。
「ごめんな未知、緊急事態なんだ」
大きな手が頬をそっと撫でてくれた。
「すぐ帰るから子供達と待っててくれ」
離れていく彼の手を咄嗟に掴んだ。
「一階のテナントに銃弾が撃ち込まれたと弓削から連絡があったんだ。これ以上真沙哉の好きにさせる訳にはいかないんだ」
懇願され本当は離したくなかったけれど、すっと手を下ろした。家族同然の組のみんなと、組を守れるのは彼しかいないもの。
「真沙哉は、大上の弔い合戦をしているんだ。止められるのは俺しかいない。柚原行くぞ。橘、千里、未知や子供達を頼む」
颯爽と歩き出した彼の背中を追って柚原さんが駆け出した。
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