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番外編 彼のお兄さん

駅前の繁華街。『中国菜館・華林』など居酒屋がテナントとして入るビルの最上階『海洋』という名前の会社に連れていかれた。 「゛かいよう゛じゃなくて、゛ハイヤン゛だ。中国語で大洋を意味する。身を隠すためのペーパー会社だ」 中はガランとしていた。 揃いも揃って人相の悪い男たちが雑然と置かれた机に腰を掛け缶ビール片手にタバコをふかしながら何やら話し込んでいた。 真沙哉さんに気が付いた男たちが一斉に姿勢をただし深々と頭を下げた。 「大事な人質だ。逃がしたらぶっ殺すぞ」 真沙哉さんがドスのきいた低い声で男達を脅し付けた。 「へぇ~コイツが菱沼組の姐さんか」 中国人に混じり何人か日本人がいた。 ニタニタと薄笑いしながら、まるで値踏みするように全身をくまなく見られた。 「ミセモンジャナイヨ」 太惺を抱っこした男性がすっと前に出た。 目を吊り上げ男たちを中国語で一喝すると一瞬で場が静まり返った。 部屋の一番奥。パーテーションで仕切られた場所に連れていかれた。ダブルベットがどんと置かれてあるだけで家具などは一切見当たらない。 「しばらくここにいて貰う。大人しくしていれば危害は加えない」 真沙哉さんはそれだけ言い残すとあっという間にいなくなった。

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