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番外編 彼のお兄さん
男性の名前は琥珀 。僕達親子の身の回りの世話をしてくれた。太惺や心望のミルクや着替えは勿論、ゆるゆるうんちにびびることなくおむつを交換してくれたり、遥香が退屈しないようにと一緒に遊んでくれた。
年の離れた弟さんか妹さんがいるのかな?言葉がよく分からないから聞くにも聞けなかった。
最初はちんぷんかんぷんで全然分からなかったけど、みんな琥珀さんのことをアンダーと呼んでいた。真沙哉さんに次いで二番目に偉いアンダーボスだと教えて貰ったときは腰を抜かすほど吃驚した。
部下に対しては一切手加減なし。とことん厳しい。でも、何故か僕達親子にはすっごく優しくしてくれる。
「ハルちゃんおうちかえりたい。パパにあいたい」
寂しいときや構って欲しいときに指をしゃぶる癖がある遥香。親指をくわえながら泣き出した。
心望も太惺もそれにつられて泣き始めて。一人でてんやわんやになりながらあやしていたら、大きな手が遥香の頭をそっと優しく撫でてくれた。
「パパ・・・・?」
遥香には彼が父親に見えたのだろう。
赤く腫れ上がった濡れた目蓋を手の甲でごしごと拭うと、自ら抱っこをねだった。
遥香、違うよ。その人はパパじゃないよ。慌てて止めようとしたら、
「この子は俺が面倒みる。そっちの二人をさっさと黙らせろ」
むすっとしながら、恐る恐るそぉーと遥香を抱き上げてくれた。
「浩然、ダイジョウブ?」
「五月蝿い、ガキの世話なんてしたことがないんだからしょうがないだろ」
琥珀さんに心配され、ますます膨れっ面になる真沙哉さん。
血も涙もない冷酷な人だと思っていただけに驚いた。
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