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番外編 彼のお兄さん
「俺が憎いか?」
小刻みに震える手を見て、口角を吊り上げニヤリと笑われた。
彼は現役に復帰したとき覚悟を決めた。僕達家族や組のみんなを命をかけて守り抜くって。だから自分に万が一のことがあったら、未知お前が、橘さんや柚原さんや弓削さんと一緒に組を守れって………
全然頼りがないがないけど、みんなに守られてばかりだけど、こう見えても菱沼組の組長、卯月遥琉の妻だもの。
目を一旦閉じてひとつ深呼吸してから、ハサミを持ち上げ真沙哉さんを睨み返した。
「湍水は息子に、本当の父親じゃないのに父親ずらするな、うざいんだよ。そう言われぶちキレた。気が付いたら頭から血を流し虫の息の息子が足元に転がっていた。お前の息子もいずれ同じ道を辿るだろうよ、遥琉 とは血の繋がりがないんだ、所詮は他人だ、違うか?」
真沙哉さんの手が音もなく伸びてきた。
「湍水の二の舞になる前に、ガキ共を連れ、俺のところに来い」
ハサミの刃先の部分を握ると、そのまますっと取り上げられた。
「抱き心地がいい体だ。俺専属の抱き枕にしてやる」
ふざけないで!
怒りがふつふつと込み上げてきた。
一太が湍水さんの息子さんと同じ運命を辿るって、勝手に決めつけないで。
それに、彼は生きてるから。
僕や子供たち、それにみんなを残して先に逝くなんて、絶対に有り得ないから。
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