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番外編 彼のお兄さん
「じゃあ聞くが何で迎えに来ない」
嘲笑いながら真沙哉さんの指がペンダントに触れてきた。
「GPSと盗聴器が仕込まれているんだろこれ」
何でその事を知ってるの?
驚きのあまり言葉を失った。
「バカがつくくらい愛妻家で、焼きもち妬きの遥琉《アイツ》が考えることだ。容易に予想がつく」
ペンダントを手に取るときつく握り締め、強引に引っ張った。
彼から貰った大切なプレゼンなの。
無駄な抵抗だとは分かっていたけど、何もしないで取り上げられるのだけはどうしても嫌だった。
彼の手を掴み首を横にぶんぶんと何度も振った。
「俺に触れるな!」冷ややかな眼差しでジロリと見下ろされた。
「あと1時間後に迎えが来る。一緒にマカオに帰るぞ」
真沙哉さんの整った顔が近付いてきて。慌てて顔を逸らしたけど、長い指が頤を強引に掬い上げて、抵抗する間もなくあっという間に唇を奪われていた。
「アン フェ"ァ アイ チー/チー(俺の可愛い妻)」
そう口にすると勝ち誇ったようにゲラゲラと笑い出した。
何も出来ない自分が情けなくて。悔しくて。ごしごしと手の甲で唇を拭うと、一筋の涙がぽろりと目蓋の縁から溢れ落ちた。
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