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番外編 彼のお兄さん

「今確か遥琉って・・・・」 白目も見えるほどに目を見開く咲さん。これだけ騒々しくてもすやすやと熟睡する3人にようやく気が付き、ニヤリと唇の端を歪めて笑った。 「ヘ~ぇ、貴方がね・・・・」 嫌悪感を露骨に表情に出して、ジロジロと好奇の目で全身をくまなく見られた。 「どこにでもいる普通の子じゃないの。噂じゃ、子供だしにして遥琉に色仕掛けで近付いて、那奈を追い出し、妻の座に納まった、性悪女、略奪女だって。私は遥琉の結婚相手が那奈だから彼を託したのよ」 どれだけ侮辱されようがただひたすら耐えるしかなかった。 那奈姉さんから彼を奪ったのは事実だし、一太がいなかったら僕みたいなこぶつきの気色悪いのと一緒になってくれなかった。 悔しかったけど上唇を噛み締めて、じっと我慢した。子供たちの前でみっともない真似だけはしたくなかったから。 「言いたいのはそれだけか。湍水組の姐さんがお帰りだ、丁重に送ってやれ」 イライラしながらも黙って聞いていた真沙哉さんが声を荒げ琥珀さんに命じた。 「ちょっと離して!痛い!」 必死に抵抗する咲さんの首根っこを無表情でむんずと掴むと、華奢な体を引き摺ってそのままドアへ向かった。 「そんな男の………気色悪い生き物のどこがいいのよ」 「ミチワルクナイ、ダマレ」 喚き散らす咲さんを怒り心頭の様子でジロリと睨み付ける琥珀さん。 「咲、それ以上怒らせたらマジで殺されるぞ」 真沙哉さんが呆れたようにため息をついて苦笑いした。

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