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番外編 焼きもちを妬いてばかりの彼
「茨木さんに紹介されたのは森崎さんでした。真沙哉さんの部下だったときに、新しいダンベイがシンガポール在住の華僑の資産家ということで独学で猛勉強したと彼から聞きました。何度かメールのやり取りをしているうちに、自分から正体を明かし、女や子供を金と欲のための使い捨ての駒としてしかみない真沙哉さんのやり方がどうしても許せないと。今回の咲さんのことがきっと引き金になったのでしょうね。未知さんが連れ去られたあとも、琥珀さんが逐一連絡を寄越してくれていたんですよ。未知さんを真沙哉さんがやけに気に入ったとか、マカオに連れ帰り妻にするとか、それと・・・・」
橘さんそれ以上は言わないで。絶対に駄目。目で必死に訴え掛けた。
「人の女房好き勝手にしやがって・・・・思い出すだけで忌々しい」
急に声を荒げ怒りを露にした。
「ペンダントを取り上げられたあと、アイツに何かされたか?」
「ううん、何も」
疑いの眼差しを向けられ、ぶんぶんと首を横に振った。
「本当か?」
念を押すように真顔で顔を覗き込まれ頷くだけで精一杯だった。
「遥琉、未知さんは悪くありませんよ。責めるのはお門違いですよ」
「言われなくても分かってる」
ぶっきらぼうに言葉を返すと、ぶすっとしてそっぽを向いてしまった。
「茨木さん、琥珀を紹介がてら、これから度会さんのうちで呑むんだって。帰りが少し遅くなるって柚原が連絡を寄越した」
先に診療所をタクシーで出発したはずなのに、一太やお祖父ちゃんの姿がどこにも見当たらなくて心配していたら、事務所に二人を探しに行っていた彼がスマホを耳にあてながら戻ってきた。
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