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番外編 焼きもちを妬いてばかり彼

「何故まだいるんですか」 彼の背後からぬっと姿を現した男性を一目見るなり、橘さんが鼻筋に皺を寄せ後ずさりした。 「通訳が必要だろ?」 「ある程度の日本語は分かるとさっきも申しました。直矢さんのところに帰ってください」 森崎さんと一緒にいるところを柚原さんに見れたらまずいとでも思ったのか、かなり動揺していた。 「未知、巻き込まれる前にうちに帰るぞ」 彼に手を握られそのままエレベーターに乗り込んだ。 その日の夜ーー 「本当の父親でもないくせに、父親ズラするな、ウザいんだよ・・・・一太にそう言われる日がいつか来るのかな?」 一太と遥香のあどけない寝顔を目を細めて眺めていた彼が寂しそうにポツリと呟いた。 「遥琉・・・・さん・・・・」 どう声を返していいものか悩んでいたら、 「湍水さんの息子さんは、イジメが原因で中一の頃から不登校になり部屋に引きこもっていたそうです」 心望にミルクを飲ませ慣れた手つきで背中を擦ってゲップさせていた橘さんが代わりに答えてくれた。 「湍水の言うことなんて聞く耳も持ちやしない。喧嘩は日常茶飯事、それでも湍水は決して手を上げることはなかった」 「売り言葉に買い言葉、まさか息子さんにそう言われるとは思ってもみなかったんでしょうね。ついカッとなって気が付いたら息子さんを殴っていたそうです」 うとうとし始めた心望を横に抱っこし直す橘さん。一方の太惺は飲み足りないのかおっぱいからなかなか口を離そうとはしなかった。 「鼻の下が伸びてますよ、人が話しをしているときくらい真面目に聞いてください」 叱られていつもならしゅんと項垂れる彼。でも今日は違ってた。 「もしかしてスカルに言われたこと、気にしてるんですか?」 「ヤツが言ったことは嘘だ、未知がいるんだ、今更咲とヨリを戻すなんて有り得ない。未知、真沙哉と咲に酷いことを言われ辛かっただろう」 ううん、上唇を噛み締め首を横に振った。 だって本当のことだもの。 那奈姉さんから遥琉さんを奪ったのは事実だもの。

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