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番外編 焼きもちを妬いてばかりの彼

「はやみ、さん……は?えみ、さん………は?むつみ、さん……は?」 正直聞くのが怖かったけど、逃げてばかりいては何もはじまらない。意を決して聞いてみた。 「悠はろくに食事も与えられず殴る蹴るの暴力を受けながら半年近く監禁されていた。車椅子なしでは移動が出来ないくらい衰弱していて入院中だ。睦の怪我はたいしたことはない。鳥飼が付き添っているから心配ない」 「じゃあ、咲さんは?」 「琥珀さんが茨木さんの配下の者に引き渡したのですが、移動中に忽然と姿を消して、それ以降消息不明で、手分けして捜索している最中です」 彼の代わりに橘さんが答えてくれた。 「咲のことはもういいだろう」 「よくない」首を横に振った。 「もう二度と未知や子供達を危ない目に遇わせたくないんだ。咲のことはサツに任せておけ」 そこで初めて咲さんが睦さんの誘拐と監禁容疑で全国に指名手配されていることを知った。湍水さんは弁護士を通じ息子を殺したことを警察に正直に話し、退院を待って殺人罪で逮捕されるということも。 「未知、話しは変わるが…………」 言いにくそうに彼が切り出した。 「帰ってきて真っ先に話すべきだったんだが本当にご免な、実は………尊に面会してきたんだ。俺の身を案じた千里が秦さんに真沙哉が潜んでいるかも知れないからと、湍水組の内偵を頼んだ。それで分かったのが、スカルが真沙哉の弾よけに自ら志願したということだ。だから、ヤツがどういう人間かを聞くためにわざわざ会いに行ってやったのに、それなのにあの野郎・・・・」 悔しそうに唇を噛み締め手を強く握り締めた。 「俺の知らない未知の小さい頃の自慢話ばかりしやがって、しまいには、馬鹿にするように鼻で笑いやがった。ムカついたから、未知の両親に、小さい頃を写したアルバムを全部譲ってほしいと頼みに行ったんだ」 「遥琉、あなたという人は・・・・」 深く溜め息をつきながら額に手を置く橘さん。ほとほと困った表情を浮かべていた。 「それが滅茶滅茶可愛いんだよ、笑った顔が特に………」 一人で盛り上がる彼に、もはや掛ける言葉もなく、呆れるしかなかった。

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