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SS 遥香と琥珀さん

「遥琉、琥珀さんは親の愛情を知らずに育ったんです。少しくらい未知さんを貸してあげたらどうですか?」 「お前までソイツの味方をするのか」 「ソイツじゃなく、いい加減名前で呼んであげてください」 橘さんに言われ面白くないのか、憮然とする彼。 「ーー度会・・・・サチ・・・・だっけ、確か」 ぼそっと呟くとプイッとそっぽを向いてしまった。 このまま日本に住むなら法的な手続きが必要だと橘さんが話していた。このままだと不法滞在としてマカオに強制送還されるみたい。 度会さんと紫さんが琥珀さんの仮親になり、度会紗智《わたらいさち》という遥香でも呼びやすい名前に変え再スタートを切った。 『こはくしゃん』がすっかり定着した遥香には、琥珀さんの新しい名前に慣れるまで暫く時間が掛かるかも知れない。 「ママ、ハルちゃん、さっちゃんただいま~~」 弓削さんと仲良く手を繋いで一太がひっこりと顔を出した。 「あっ‼パパだ‼」 大好きな彼の姿を見つけるなりニコニコの笑顔で胸元に飛び込んでいった。 「幼稚園楽しかったか⁉」 「うん‼」 抱っこしてもらい、頭を撫でてもらうと溢れんばかりの笑顔が零れた。

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