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Thanks!SS 遥香と琥珀さん

「おぃ、何してるんだ」 一太と手を繋ぎ彼が戻ってきた。 戻ってくるなり顔をしかめ、寺内という男性をジロリと睨み付けた。 「寺内、何でてめぇがここにいる」 「コイツの息子がお前の娘にぶつかって、怪我をさせたんだ。橋本、ぼけっと突っ立ってないでさっさと謝らないか」 寺内さんが若い男性の襟首をむんずと掴み、彼の前に引き摺りだすと頭をポカッと叩いた。 「すみませんでした」 ビクビクしながら腰を九の字に曲げる若い男性。 「謝るのは俺にじゃなく、娘と琥珀にだろう」 彼がチラッと商品棚の方へ目を向けた。遥香と同い年くらいの男の子が小さな男の子と売り場を走り回って大騒ぎしているにも関わらず、赤ちゃんを抱っこした母親らしき女性は一切注意しようとせず、片手でスマホを弄っていた。 「若いのに三人もガキがいるのか。お前幾つだ?」 「………21です」 男性がぼそっと呟いた。 さっきまであれほど威勢が良かったのが嘘のようだ。 「カミさんも随分と若いな。まだ十代か?俺も人のことをいえる立場じゃないが、産みっぱなしでろくに躾もしてないんだろう。悪いことをしたらすぐにごめんなさいって言えるガキに育ててやらねぇと。カミさんにもスマホばっか見てないで、自分の子供くらいちゃんと見ろって注意してやらないとダメだろう」 頭ごなしに怒らず言い聞かせるように男性を諭す彼。 そんな彼を一太は尊敬の眼差しで見詰めていた。

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