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Thanks!SS 愛人と情人

「あれは酒に酔った森崎さんが勝手に入ってきただけで………別にやましいことはしてません」 「じゃあさぁ、ホテルの件はどうなんだ?」 「あれも、湍水さんの面会に森崎さんが勝手に付いてきただけで……ホテル側の手違いでダブルの部屋になってしまって、他に空きがなく、仕方なく一緒に泊まっただけです。やましいことは一切してません」 「好きな野郎が目の前にいるんだ。何もしない訳がない」 「私は未知さんほど可愛くありませんよ。好き好んで襲う人などいませんよ」 「俺にとって未知より優璃、お前の方が何倍も可愛い。森崎だって同じだ」 追及の手を緩めない柚原さんに対し、橘さんも必死になり弁解していた。 そんな二人を最初は目を丸くして見ていた琥珀さんだったけど……… 「痴話喧嘩するほど仲いい、よく聞く。いいなぁ……痴話喧嘩が出来て。俺、浩然と痴話喧嘩したことないから、羨ましい」 寂しそうに項垂れてポツリと呟いた。 「それをいうなら喧嘩するほど仲がいいだ。橘も柚原も、子供のいる前でみっともない」 遥香と一太を連れて彼が姿を現した。 「なぁ琥珀、無理に忘れようとしなくてもいいんじゃないか。心の傷が癒えたとき、真沙哉よりも好きになる人がきっと現れるはずだ。共にトラウマを乗り越えてくれる人がな。未知がそうだったように。だから今は甘えたいときに甘えたらいい」 「シェ シェ ニ(ありがとう)」琥珀さんが頭をぺこっと下げた。 「おっ、珍しいな。焼きもちを妬かないのか?」 「お前と橘のくだらない痴話喧嘩を見ていたら怒る気が失せた」 「なんだそれ」 柚原さんと他愛のない会話で盛り上っていると、テーブルの上に置いてあったスマホがぶるぶると振動を始め、青白い明かりがチカチカと点滅した。

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