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番外編 底無しの憎悪の刃
電話は裕貴さんからだった。
拘置所にいる湍水さんに面会に行った時に気になることを言われ彼に連絡を寄越してくれたみたいだった。
それはマカオに向かっていた真沙哉さんのプライベートジェット機が南シナ海で突如として消息を絶った。
青蛇(チン シュア)のトップにリー・フランユーが暫定的に就任し、真沙哉さんが側に侍らしていたお気に入りの女性たちをそのままを情人(チンレン)として囲っているらしい。その中にどうやら咲もいる。そしてもう一人。リー・フランユーを女の武器で虜にしまんまと愛人(アイレン)の座に収まったホステスがいる。どうやら菱沼組の卯月の女房と関り合いがある女らしい。
「未知、貝沼彩という名前に聞き覚えあるか?」
貝沼彩って…………そんなまさか………
彼に聞かれ、手の震えが止まらなくなった。
額からは冷や汗が吹き出した。
「………お兄ちゃんの………」
ガクガク震えながらやっとの思いで言葉を紡ぎだした。
「尊の?」
「うん、最初の奥さんだったひと。僕のせいで………」
スボンの生地を握り締め上唇を噛み締めた。
「ごめんな。嫌なことを思い出させてしまって」
大きな手が頭を優しく撫でてくれた。
「そっか尊の元カミさんか。それだけ分かれば充分だ」
「あのね、遥琉さん……」
宥めるようにチュッと額に、鼻先に、頬っぺに。
最後に唇に口付けをしてくれた。
「未知、太惺と心望がママって呼んでる。あとのことは俺に任せろ」
にこっと微笑んで、スマホを手にすると慌ただしく寝室から出ていった。
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