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番外編 底無しの憎悪の刃
いつもならこの時間帯は学校に行ってる時間なのに、僕は原因不明の体調不良で寝込んでいた。かれこれ体調が悪くなり2週間になる。全身のだるさと微熱に加えて吐き気もあって。トイレに何度も駆け込んでいた。
きっとウイルス性の胃腸炎よ。学校で流行っているだし。大したことないわよ。お母さんにそう言われかかりつけの近所の小児科を受診した。先生から告げられた結果は当時まだ中学3年生だった僕にとってすぐには受け入れ難い衝撃的なものだった。
お母さんは半狂乱になりその場に泣き崩れ、連絡を受けて駆け付けてくれたお父さんも茫然自失となりその場に崩れ落ちた。
妊娠三ヶ月。望まない妊娠なら今すぐ堕胎するか、産んでその子を養子に出すか。
僕達親子は先生から究極の選択を迫られた。
「尊さん、未知には一生会わないと約束したはずです。帰ってください」
どこから聞き付けたのかすぐにお兄ちゃんが会いに来た。
でもお母さんは玄関のドアを開けなかった。
鬼のような怖い顔でドアの向こうにいるお兄ちゃんを睨み付けていた。
そうこれは封印した15才の時の記憶だ。
「子供には罪はないはずだ。未知、パパとその子と3人でどこか遠い所で一緒に暮らそう」
開けてくれと言わんばかりにドアを何度も何度もドンドンと叩いていた。
「やぁだ、来ないで!」
全身に鳥肌が立ちガクガクと震えが止まらなくて。怖くて。息さえ上手くつけなくて。苦しくて。布団を頭から被り小さく丸くなって耳を両方の手で押さえブンブンと首を横に振った。
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