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番外編 底無しの憎悪の刃

「琥珀、未知に変なのを見せるな」 「聞かれたから答えた。悪くない」 「はいはい、そうだな」 やれやれとため息をつく彼。 昨夜から事務所に籠りっきりで殆ど寝てない。 「遥琉さん・・・・大丈夫?」 眠そうに目を擦る彼に思わず声を掛けた。 「未知の膝枕で寝たいが・・・・」 先にゴロンと横になっている遥香と琥珀さんを羨ましげに見つめた。 睦さんと鳥飼さんは、柚原さんと弓削さんが度会さんの所に連れていった。 『菱沼組で骨を埋《うず》めるつもりで誠心誠意尽くしたい』 鳥飼さんが居並ぶ幹部を前に土下座して、彼に盃を交わしたいと頼み込んだ。 このまま忠実な犬(しのべ)として飼い慣らされ、いいようにしか利用されないならと、睦さんの将来を考えた末の決断だったみたい。当然のように烈火のごとく怒り出した彼。どんな理由がそんなの認められる訳がないだろうと、彼は首を縦に振らなかった。 「ハルちゃん、さっちゃんあそぼ」 幼稚園から帰ってきてすぐに着替えを済ませた一太がパタパタと元気一杯に走ってきた。 迎えに行ってくれた橘さんにでも頼まれたのかな。 太惺と心望がお昼寝している間の僅かな時間だけど、二人きりにしてくれた。

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