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番外編 すべてのはじまりは23年前に勃発した内部抗争

湍水さんが、恐らく寝る間も惜しんで何も知らない僕に真実を伝えるためにわざわざ手紙を書いてくれたんだと思う。 一度も会ったことがない僕のためにそこまでしてくれるなんて。 彼やお祖父ちゃん、お義父さんに感謝しないと。 『卯月未知。播本さんから孫だと聞いた時は正直驚いた。同時に播本さんの孫が、卯月さんと結ばれたことに不思議な縁を感じた。 すべては23年前に勃発した昇龍会の内部抗争からはじまっていたのかも知れない』 几帳面な性格を物語るように一文一文、とても丁寧に書かれてあった。 『昇龍会4代目組長・石川方久《いしかわまさひさ》は、愛人宅を訪ねようとして、三人のヒットマンの待ち伏せ攻撃に遭った。弾よけの舎弟らが命懸けで石川を守ろうとしたが、弾は頭部を貫通していてほぼ即死だった。 当時、跡目を巡り先妻の子を推す本部長の秦蒼甫と、後妻の子を推す若頭の成宮が真っ向から対立していた。 悪い噂が絶えなかった成宮が裏で九鬼総業と繋がっていて石川を暗殺させたのではないかとまことしやかに憶測が飛び交った。 秦は成宮に宣戦布告し、昇龍会は完全に真っ二つに分裂しやがて血で血を争う内部抗争に発展した』

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