494 / 3586
番外編 すべてのはじまりは23前に勃発した内部抗争
跡目相続の渦中にある先妻の子である周《あまね》と後妻の子である基《もとい》も犬猿の仲で顔を合わせても決して目を合わせようとしない。話しもしなかった。そんな二人が人目を避け、密かに会っていることに播本さんが最初に気が付いた。
当時は、今みたく同性の夫婦が社会的に認知されておらず、差別や偏見の目で見られる時代。
同性、ましてや実の兄弟。
決して許される関係ではなかった。
それでも播本さんは愛し合う二人を必死に護ろうとした。
でも、二人の関係を知った成宮は周をさらい山奥の貸別荘に幽閉し殺そうとした。
周を助けるため、播本さんは僅かな舎弟を連れ単身乗り込んだ。
その時播本さんや周を助けるために何人かの舎弟が命を落としたと聞いた。
播本さんは上総さんの協力を得て周と基を海外へ逃がしたのち、現役をきっぱりとやめ、自分を助けるため命を落とした舎弟たちの遺された家族の面倒をみるようになった。
別荘から逃げ出した成宮もまた海外へと逃亡し、やがて、リー・フランユーと名を変え、真沙哉を上手く抱き込み、23年の時を越え、秦さん兄弟や播本さん、上総さん、遼禅さんへの復讐の狼煙をあげた。
「また読んでいるのか?」
背後から彼の声がしてきて、振り返ると逞しくて広い胸にすっぽりと包み込まれた。
ぽかぽかとお日様みたく温かくて心地がいい。大好きな彼に抱き締めてもらい嬉しくて笑みが零れた。
ともだちにシェアしよう!