「千里さん……あの……」 聞きたいことが山のようにあった。 「いゃ～～んもう、未知の声、電話で聞くよりカ・ワ・イ・イ。心もそう思うでしょう」 よく通る甲高い声にドキッとして、行き交う人が思わず足を止めて振り返っていた。本人は全く気付いてないみたいだけどかなり目立ってる。 「うん、可愛い。遥琉が一人占めにしたくなるのも頷ける」 「でしょ、でしょ」 黄色い歓声をあげながら、遥香と一太の頭をそれぞれ撫でてくれて、腕の中であーうーと声を出し機嫌良くにこにこと笑う心望をそぉーーと覗き込んだ。 「本当ママそっくりね～～」 対する太惺は彼の腕の中ですやすやと眠っていた。 「おぃ千里」 彼が苛立ちを露にした。 「未知が聞きたいことは何で引き受けたか、でしょう。女のアタシじゃ絶対に無理って断ったわよ。ダーリンのパパにどうしてもって頼まれて。無下にも断る訳ないでしょ。ねぇここちゃん」 いとおしそうに目を細め頭を優しく撫でてくれた。 「ダーリンのパパから23年前のことを聞いたわ。アタシとダーリンの仲を認めるように彼のパパに頼んでくれたの、遥琉と茨木さんだったって聞いて……好き同士一緒にしてやってくれて……涙が出るくらい嬉しくて………」 千里さんがズズっと鼻水を啜った。 「だからこそ力になりたいのよ。ありがとう遥琉」 「いちいち礼なんかいらない 。お前と笹原は誰が何と言おうが理想の夫婦だよ」 「やぁねぇ、涙、止まんなくなる」 千里さんが笑いながら指先でそっと目元を拭った。 「取り敢えずうちに帰ろう。ここにいては無関係な人まで大勢巻き込むことになる」 彼に言われ足早に改札口に向かった。